遊ぶように学ぶことのススメ ~未来を生きる親子学(後編)



「遊びと学びは本来一体のもの」。子ども向けの創造・表現活動を推進するNPO法人「CANVAS」を設立し、代表をつとめる石戸奈々子さん。これまでに開催したワークショップは 3000回、約50万人の子どもたちが参加しています。石戸さんが考える「遊びと学び」についてたずねました。

いろんな「上手」があることが認められる世界へ



子どもは本来、先天的に創造性にあふれています。むしろ教育環境や生活環境の中で制限されてしまっている子も出てきているんじゃないかなと思います。
絵を描いていると、小さい子はクレヨンと紙があればずーっと書き続ける子も、ある年齢を過ぎると書かない子どもも出てきます。それは自分が上手いと思っている子は書き続け、自分がそうじゃないと思うとやらなくなってしまうんですね。
自分を客観視できるタイミングで、社会的評価を自覚しはじめるのです。本来は自由に表現する創造力があるのですが、自分を社会的評価と照らし合わせて、「上手か」「下手か」みたいな価値観で判断を下してしまって急にやらなくなってしまう。個人差はありますが10歳くらいに転換期があるのではという実感があります。
むしろ、いろいろな価値観があって、いろんな「上手」があることが認められるときに、私は子どもたちは想像力や、創造力が制約されずに伸ばすことができるんじゃないかなと思います。



ひとつのこたえをもとめる姿勢を、もうやめること



想像力は、頭で考える、空想する、思い描く力。こんなのあったらいいな、こんなもの表現したいなと思う力です。創造力は、アイデアをカタチにする、実行する力。これは車の両輪のように、両方大事だと思います。 プログラミング、コンピューターなど英語などはツールに過ぎません。なにが大事かっていうと、自分自身がツールを使って何を表現し何を創り出したいかというビジョンやコンテンツの部分。だからこそ、想像(イマジネーション)する力と創造(リアライズ)する力が大事なのです。

親が生きてきた時代と今の時代、これから子どもが生きる道は明確に違っていて、大人が今まで生きてきた価値観では、計りきれない社会にもうなっているんだと思うんですね。だからこそ、大人も子どももこの変化を認めて、大人と子どもも一緒になって生涯にわたって「学びつづける姿勢」が、今親子に求められることじゃないかなと思います。

いま保護者の前で講演すると一番多く聞かれることはAIとの関連で「どんな仕事がなくなって、残るんですか?」です。 少し前は「デジタルは子どもがもつのは危ないんじゃないですか?いつごろがいいですか?どんな約束事をつくればいいんですか?」という質問が多かったのですが、スマホが浸透して保護者にとって普通のツールとなると、代わりに生まれたのは未来の仕事に関する話です。

誰も答えは分からない、答えはないかもしれない、複数あるかもしれない。そんな時代を生きる私たちは、子どもたち自身が未来を作っていかなければならない時代に突入していることを、親が認めることが第一歩だと思う。ひとつの答えをもとめる姿勢を、止めるとでも言うのでしょうか。

日常的に何かモノを創り続け、さまざまな答えを発見してきた子は「自分はできるんだ」「楽しい!」という思考が身について、新たにモノを創ることに躊躇しなくなります。 未来を生きる子どもたちの創造性を育む上で、手足を動かして思考を身体化する「モノ創り」は忘れてはならない大事なポイントです。

INTERVIEW 石戸奈々子(いしどななこ)さん
NPO法人CANVAS理事長/慶應義塾大学教授
東京大学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、子ども向け創造・表現活動を推進する NPO「CANVAS」を設立。その後、株式会社デジタルえほんを立ち上げ、えほんアプリを制作中。総務省情報通信審議会委員、デジタル教科書教材協議会理事などを兼務。著書に「子どもの創造力スイッチ!遊びと学びのひみつ基地 CANVASの実践」など。